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Oct 2020
No.07
職人の情熱が生んだ
【GEMMA 】ジェンマ
Italy

mono物語、第7回。
イタリアの老舗ニットメーカー、GEMMA(ジェンマ)をご紹介いたします。
ミラノから北西へ約一時間のところにCASTANO PRIMO(カスターノ・プリモ)にあるMAGLIERIA GEMMA(マリエリア・ジェンマ)社は、製造方法から生産技術に至るまで、大きな発展を遂げ、手作りの工場から企業へと転身しました。1958年“フルファッション編機”を使用したニット製品を作る企業として、いくつもの商品を世に送りだしています。

1.GEMMAの歴史

1958年ニット製品メーカーに転身する以前は、シルクストッキングの生産をしていました。シルクストッキングの中でも一番繊細で薄くしなやかに編み上げることが出来る、ドイツストール社の39ゲージのフルファッション編機を使って生産していました。
39ゲージの編機というのは、1.5インチの幅に39本のひげ針を配する機械です。その当時は匠の機械と呼ばれ、仕上がったシルクストッキングはヨーロッパの貴婦人たちに愛用されました。その後メンズのシルク下着なども手掛けていきました。
しかし、時代の流れには逆らえず、アメリカではナイロンストッキングが開発されると、ハンドメイドに近い高価なシルクストッキングの需要は徐々に減少し、1955年頃にはほとんど生産されなくなりました。「これまで培った技術と物作りに対する誇りをどう生かすべきか?」と考えたのがGEMMA3兄弟です。

2.GEMMA3兄弟

創業者MINO BOSCARINI(ミノ・ボスカリーニ)氏。
ETTORE(エットーレ)氏、UGO(ウーゴ)氏、FRANCESCO(フランチェスコ)氏がGEMMA3兄弟です。3人は片腕として生産から販売まですべての面において、精力的に経営を行ってきました。イタリアならではのファミリー企業です。3兄弟は「他ではできないことをやろう!」と非常に独創的な発想に至りました。

39ゲージで作ったメンズのシルク下着でさえも、高級すぎて需要が少なかったにも関わらず、さらに薄物を作ろうと45ゲージの編機の開発を考えたのです。
そのために、39ゲージの編機に使用している“ひげ針”をさらに薄くするという要望をドイツストール社に依頼をしました。しかし不可能だと断わられ、自分たちで1.5インチの中に45本の針を入れるため、針をより細く自分たちで削いで、新たな改造機を作り上げました。
これこそがGEMMA3兄弟により作られた“GEMMA-45ゲージフルファッション編機”の誕生です。

3.GEMMA社とレリアンのつながり

1981年秋からGEMMA社の製品がレリアンの店頭に展開されました。
最初の製品は、Vネックのセーターと半袖ノーカラーとカーディガンのツインニットでした。当時、このようなハイゲージ製品は日本で存在しておりませんでしたので、今までにない非常に薄く、軽く、肌触りが良いGEMMA社のニットに店頭の販売員たちも驚いたそうです。そしてその輪がお客様へ繋がっていきました。

一針一針を成型で設計していくフルファッション機での設定は非常に繊細で、肩線一つ変更するのも、3兄弟は一日中話し合い、テストする日々が続きました。
店頭でお客様からご好評をいただいている状況を知り、何とかしようと設計をレリアンパターンに変更してくれたのも、GEMMA3兄弟です。物作りにどこまでも真摯に向き合い、それまで成しえなかったことを実現できたのは、彼らのおかげです。

GEMMA社のスタッフのすべての人達は、自分たちが愛情を込めて作った商品が
遠い日本のレリアンで愛されていることをよく熟知してくださっています。
イタリアの自然が豊かな小さな町工場で働く職人たちは、日本という国に行ったことがない人ばかりですが、日本のレリアンだけは良く知っているというGEMMA社です。
そして、現在は3兄弟も天国に召され、現在は息子たちが会社を受けつぎ、同じ愛情を傾けて製品作りに取り組んでくれています。

時代に左右されることなく愛され続けられる商品は、イタリアの技術にレリアンを長年に渡りご愛用頂いているお客様からの声を反映させた国境を越えた宝物です。そしてこの先も変わらず、素晴らしい商品をお客様にお届けさせて頂けることへの感謝に尽きるのだと思います。

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